訳あり・・・
宿泊サイトで偶に見かけるフレーズ
コロナ禍前の話・・・・
その頃は外国人旅行者もそんなに多く無く、出張当日に仕事が終わった場所でホテルを取っていた。
山梨にある温泉地。
予約サイトにあった訳ありの部屋。
宿泊代も温泉宿なのに、朝食付きで六千円・・・安い。
そう思ってそのホテルを予約した。
夜19時位にチェックイン・・・
ホテルを見た時、ここであの値段?そう思うほど大きな温泉旅館だった。
チェックインを終え、部屋に向かった。
訳あり・・・どんな部屋なのだろうと思った。
部屋に入って驚いた。
凄く広い、そして庭に面した1階の部屋。
何が訳ありなんだろう?そう思った。
そして・・・あぁ、これの所為で訳ありなのか・・・それを見て思った。
耐震補強の為の鉄骨の柱が、部屋の中を通っていた。
これじゃ、確かに温泉宿に来ても興醒めだろうな・・・
ビジネスホテル感覚で来た自分には関係がない・・
コンビニで夕飯とビールを買い、お風呂に入る。
温泉宿だけあって、温泉を堪能し部屋に戻った。
お得感のある部屋、ビールを飲みながらTVを観ていた。
ふっと気が付いた。
部屋の調度品の中に、大きなこけしが置いてあった。
※こけしと表現していますが、円柱では無く、もっと人に近い造形をしていました。

※写真はお借りしました。
TVを観てると目の端に入るこけし。
こけしの細い目と口が気になり始めたが、アルコールが回りあまり気にならなくなっていた。
そして消灯。
布団に入ると、眼鏡を外してテーブルの上に置く。
暫く布団の中でゴロゴロしているとある事に気が付く。
寝ている布団の位置からTVが見えるのだが・・・その横のこけしがまた気になり始めた。
裸眼だと殆ど見えないのに、ぼーっとした視界の中に映るこけし・・・
こけしの細い目と、口・・・見えない視界の中で目が合っているような気になる。
「気持ち悪い・・・」
そう思い、布団から出てこけしを後ろ向きにした。
「これで良し。」
布団に戻り、暫くすると寝入っていた。
翌朝・・・起床して朝一で温泉に入り、そして朝食会場へ向かう。
「得したな・・・」
そう思わせる宿泊プランだった。
そして、チェックアウト・・
自分の荷物をまとめ、忘れ物が無いか部屋中を見る。
あれ?
そう思った・・・すっかり忘れていた。
でも・・・
「俺・・・後ろに向けなかったけ。」
後ろに向けたはずのこけしが・・・正面を向いて微笑んでいた。
自分では直した覚えは無かった・・・
仲居さんもチェックアウトまで部屋には入らないはずだ。
それとも、アルコールが入っていたので勘違いしていたのか・・・・
訳あり・・・もし自分の勘違いじゃなかったら、違う訳ありもあったのだろうか・・
いつかこの宿に泊まる機会があったら、その時も「訳あり」に泊まりたい。
だって・・・お得なんですもん。