訳あり。







訳あり・・・








宿泊サイトで偶に見かけるフレーズ








コロナ禍前の話・・・・










その頃は外国人旅行者もそんなに多く無く、出張当日に仕事が終わった場所でホテルを取っていた。










山梨にある温泉地。









予約サイトにあった訳ありの部屋。








宿泊代も温泉宿なのに、朝食付きで六千円・・・安い。









そう思ってそのホテルを予約した。








夜19時位にチェックイン・・・








ホテルを見た時、ここであの値段?そう思うほど大きな温泉旅館だった。








チェックインを終え、部屋に向かった。








訳あり・・・どんな部屋なのだろうと思った。








部屋に入って驚いた。







凄く広い、そして庭に面した1階の部屋。







何が訳ありなんだろう?そう思った。







そして・・・あぁ、これの所為で訳ありなのか・・・それを見て思った。








耐震補強の為の鉄骨の柱が、部屋の中を通っていた。









これじゃ、確かに温泉宿に来ても興醒めだろうな・・・








ビジネスホテル感覚で来た自分には関係がない・・








コンビニで夕飯とビールを買い、お風呂に入る。








温泉宿だけあって、温泉を堪能し部屋に戻った。









お得感のある部屋、ビールを飲みながらTVを観ていた。








ふっと気が付いた。








部屋の調度品の中に、大きなこけしが置いてあった。

※こけしと表現していますが、円柱では無く、もっと人に近い造形をしていました。







スクリーンショット 2024-07-23 092758.jpg

※写真はお借りしました。








TVを観てると目の端に入るこけし。









こけしの細い目と口が気になり始めたが、アルコールが回りあまり気にならなくなっていた。








そして消灯。







布団に入ると、眼鏡を外してテーブルの上に置く。








暫く布団の中でゴロゴロしているとある事に気が付く。








寝ている布団の位置からTVが見えるのだが・・・その横のこけしがまた気になり始めた。









裸眼だと殆ど見えないのに、ぼーっとした視界の中に映るこけし・・・








こけしの細い目と、口・・・見えない視界の中で目が合っているような気になる。








「気持ち悪い・・・」







そう思い、布団から出てこけしを後ろ向きにした。








「これで良し。」








布団に戻り、暫くすると寝入っていた。







翌朝・・・起床して朝一で温泉に入り、そして朝食会場へ向かう。







「得したな・・・」








そう思わせる宿泊プランだった。







そして、チェックアウト・・







自分の荷物をまとめ、忘れ物が無いか部屋中を見る。








あれ?







そう思った・・・すっかり忘れていた。








でも・・・








「俺・・・後ろに向けなかったけ。」








後ろに向けたはずのこけしが・・・正面を向いて微笑んでいた。









自分では直した覚えは無かった・・・








仲居さんもチェックアウトまで部屋には入らないはずだ。








それとも、アルコールが入っていたので勘違いしていたのか・・・・










訳あり・・・もし自分の勘違いじゃなかったら、違う訳ありもあったのだろうか・・











いつかこの宿に泊まる機会があったら、その時も「訳あり」に泊まりたい。









だって・・・お得なんですもん。