連れて来たもの・・







高校生の時・・・・







都内にある高校に、青い電車に乗って通ていた。








部活帰りに疲れた体を引きずるように電車に乗る。









それは雨の日、何時もの車両に部活の仲間と乗る。









雨が降っていたので乗客は傘を持っていた。








そんな中、子供用の黄色い傘を持った女性が座席に座っていた。









スクリーンショット 2024-07-27 101243.jpg

※写真はお借りしました。








子供の迎えにでも行くのかな?そう思った。









でも妙に目立った・・・何がと言われても答えられないが、何故か目を引いた。









そして、私が降りる駅の一つ前の駅でその女性は降りた。









その姿を目で追った覚えがある。








ドアが閉まり、電車が動き出す。









部活の仲間に視線を戻し、何となく見ていた女性の事を口にした。









「今降りた女の人、子供の傘しかもってなかったよね・・・」








そう聞いたのだが、仲間からは違う答えが返って来た。








「なに、拳客は年上の女性が良いのか?」








そんな事を言われて、揶揄われ会話は終了した。









そして次の日・・・









同じように部活を終え、仲間と一緒に電車に乗る。








暫く仲間と馬鹿話をしていると、座席に座る女性が目に入った。










あれ?昨日の女性だ。










同じ車両の同じ場所に座っていた。









そして違和感








今日は一日晴れていた・・・









座席に座っている女性は、昨日と同じく子供用の黄色い傘を持っていた。









その女性から目が離せなかった。









俯き加減に座る女性・・・・黄色い傘。









そして、昨日と同じ駅で降りて行った。









偶々だったのだろうか、同じ女性と同じ傘・・・・そう思った。









そして翌日も、部活帰りに仲間と同じ電車に乗る。









仲間と馬鹿話・・・・目線を車両内に向けた瞬間声を出してしまった。










また黄色い傘を持った女性が座っていた。









しかも顔を上げこちらを見ていた。









まずい、理由なんて無いがそう思った。








仲間に声を掛けた。







「なぁ、あそこの黄色い傘を持った女性・・・」







そう言った瞬間、黄色い傘を持った女性が立ちあがった。








部活仲間が私の方を向く。







「傘を持った女の人がどうした・・・」







私は立ち上がった女性を、失礼かと思ったが指さした。








「あの女の人・・・・」









部活仲間が指さした方向を見る。







そして、私へ視線を戻し・・・








「どの人の事言ってんだよ。席空いてんじゃん。」









部活の仲間には見えていなかった・・・違和感の正体はコレだった。












立ち上がった女性から視線を外し、仲間との会話に戻る。









私の言動をなじられる・・・








笑いながら、目の端に映る女性を意識していた。









次の駅で女性は降りるはずだ・・・









立ち上がった女性は、黄色い傘を大事そうに抱えて歩き出した。











正直、ホッとした・・・降りてくれればそれで良い。









駅に着き、ドアが開く。








目の端に映る女性が、歩く・・・









ドアが閉まり、電車が動き出す。









女性は降りなかった・・・そしてこちらに向かって歩いてきた。








頭の中で状況判断が出来なかった。










何故?・・・・それしか浮かばなかった。









女性が近づいてくる。








心臓が壊れるかと思うくらいに激しく動く。







そして・・・








私の横で立ち止まった。









皆には見えていない・・・









隣に佇む女性・・・知らない振りをする自分。









そして自分の降車する駅が近づいて来た。








降りてしまえば、ついてこないかも・・・そう思った。









駅に入り電車が止まる。








仲間に「じゃあ!また明日。」









そう声を掛けて、急いで電車を降りた。









振り返り、仲間に手を上げた・・・










真後ろに女性が立っていた。








わっ!







声を上げてしまった。








ホームにいた他の人が私を見ている。









佇む女性と目が合った。










目に表情が無い・・・今言葉にすればこの表現があっていると思う。











私は走って、乗り換えの地下鉄に向かって逃げた。










女性が付いてきていないか、何度も後ろに振り向きながら走った・・










そして、到着した電車に飛び乗った・・・後ろを振り返る。









居ない・・・ホッとした。










電車に揺られながら、アレが何だったのか考えた。












答えなんか出る訳も無かった・・・










自分の住む街の駅に着き、ホームを歩き改札に行く階段に向かう。











階段は、降乗客で少し混んでいた・・・










そして・・・・








階段横に佇み・・・・・











子供用の黄色い傘を持った女性がこちらを見ていた。










もう何も考えられなかった・・・








女性に気付いていない振りをしながら、階段を駆け下り改札を抜けた。











駐輪場で自転車に乗り、自宅に向かって逃げた。










そして










ドン!










初めて事故にあった。










逃げる事ばかり考えて、周りを見ていなかった所為だった。











信号の無い交差点で飛び出した私に責任がある。










車も信号の無い交差点だった為、徐行していたので助かった。










自転車から放り出されたが、柔道部だったので受け身を取り頭を打つことは無かった。










軽いむち打ちで済んだ・・・・











その後は、黄色い傘の女性を見ることはなかった・・・










あれは何だったのだろう・・・・












初めての事故と抱き合わせで、鮮明に記憶に残っている。












私はあの時、何を連れてきてしまったんだろうか・・・










この記事へのコメント

  • ぼんぼちぼちぼち

    いやー、これは怖い話しでやすねぇ。
    そういうの見えちゃう人って、ほんとにいるんでやすねぇ。
    2024年07月27日 10:50
  • お散歩爺

    霊感が強いのかな?その様に説明が付かないような事ってありますよね爺も多いです、長くなるので省きますが霊的なことに何度か出会ってます。
    2024年07月27日 15:33
  • zombiekong

    今回も怖いですね。
    幽霊は見えないふりをしていれば大丈夫なんでしょうか。
    2024年07月27日 20:50
  • さる1号

    (((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
    事故、軽いむち打ちで済んで良かったですね
    自分はその類いのものが見えなくて良かった
    2024年07月28日 09:59
  • 青山実花

    女性は、
    子どもさんを迎えに行って、
    事故などに遭ったのか・・・
    と思いました。
    拳客さんにしか見えない、
    誰も座っていない席に、
    誰かが座ったら、
    どうなるのかとも思いました。
    怪我が軽症で良かったです。
    2024年07月28日 10:20
  • kuwachan

    本当にこういうことってあるんですね。
    私は全く経験がありませんが。
    怪我が軽いむち打ちだけで済んで本当に良かったです。
    2024年07月28日 11:12
  • なかちゃん

    とっても怖い、怖過ぎるお話ですね。
    ボクはこの手のはあまり得意ではないので、これが自分だったらどうしていただろうなんて考えただけで震えてしまいます。
    2024年07月30日 07:55
  • Rinko

    久しぶりの挙客さんの怖い話、すぅーっと背筋が寒くなりました。
    読むだけでも怖すぎます( ;∀;)
    それにしても、事故で大事に至らなくて本当に良かったです。
    2024年07月30日 08:28
  • たいへー

    有難うございます。 十分涼ませて頂きました。
    2024年07月30日 09:05
  • 拳客

    ぼんぼちぼちぼち様
    ・・・・他人が見えてない方が怖いんです。

    お散歩爺さま
    お互いあんまり遭遇したくないですよね。

    zombiekongさま
    今迄の感じですと、無理っす。

    さる1号さま
    見えない方が良いですよね。でもこの時は事故も含めて怖かったです。

    青山実花さま
    なんでそこに居るのかなんて理由も分からずに見えるんです。
    理由もわかって見る人って幸せなのかな。

    kuwachanさま
    あの時は怖くて、今でも事故の記憶と一緒に鮮明に覚えてるんです。

    なかちゃん
    私も新年の厄除けの時に「怖い目にあいませんように。」と必ずお祈りしています。

    Rinkoさま
    あの時の事故は、運が良かったのかと思っています。
    下手したら・・・ねぇ・・・

    たいへー様
    それはそれは涼めて良かったですね。


    niceを頂いた皆様、ありがとうございます。
    2024年07月31日 18:02
  • kgoto

    いやー、怖い話ですね。
    おかけさまで、だいぶ涼むことができました(大汗)
    2024年08月15日 18:17